1・2・100 piece / ドラムとピット
動物から剥いだ皮はそのままでは腐敗し、乾燥して硬くなってしまいます。
それを防ぐために加工する技術を「なめし(鞣し)」と言い、なめす前を「皮」、なめし後を「革」と表現します。
革のなめしには大きく2つに分かれ、「タンニンなめし」と「クロムなめし」があります。この2つを組み合わせた「複合なめし」もあります。
「タンニンなめし」は、木の皮や果実など植物から抽出されるタンニン(渋)成分を使用します。
ドラム槽(大きな樽)の中にタンニン液を入れて革に叩き込む方法と、ピット槽(プールのような水槽)に低濃度から高濃度へ、徐々に濃度のちがうタンニン液を漬け込む方法があります。革のなめし技法が体系化される以前の原始的な方法を含めれば、その起源は先史時代といわれ諸説あります。
ドラム槽は、仕上がりが早く効率的で、原皮が回転槽内に叩きつけられるため、革がやわらかく仕上がります。
ピット槽は、30以上の工程で平均1ヶ月以上の時間をかけるため、 革は自然の状態のままの風合いが強く残り、繊維が固く締まった仕上がりになります。
「クロムなめし」は主に塩基性硫酸クロム塩という化学薬品を使用します。 なめし方はドラム槽(大きな樽)の中にクロム液を入れて革に叩き込む方法です。 なめす時間が短く経済性に優れ、最も広く行われているなめし方で、世界の約8割のものはクロムなめし革で出来ているといわれています。
今回製作したマットは、ドラム槽とピット槽の裁ち落とし革を混ぜ合わせています。
大きいものだと1050×1050(mm)ほどあり、配置の仕方はただ並べているためか地層のようにも見えます。
おもて面には、スリッパ等の製品を裁断する前に検品したペン跡、 うら面には、国内とバングラディシュで作業された方のペン跡。ぜひ両面ご覧いただけたらと思います。
「1・2・100ピース」シリーズでは、タンニンとクロムのなめし方を比較した良し悪しではなく、裁ち落としでどのようなことが出来るか実験的に行っています。
キズやペン跡を縫い合わせただけの集合体は、とても表情豊かです。大判製作ははじめてのせいか、しばらく時間をわすれ見続けました。
12. 15 , 2017
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